コーディネーターって何?Part④

2ヶ月間続いた仕込み作業が終わった段階でディレクターは素早く韓国へ飛んで来る。全てのロケ候補地を鋭い目で見て回り再び日本へ帰国。数日後、局内の打ち合わせを経て、全ロケ地が確定になる。やっと美味しいビールが飲めてホッとするのも束の間で、明日からはタレントさん込みのロケが本格的にスタートするのだ。

ロケは時間との戦いである

超売れっ子のタレントさんに与えられた韓国での滞在期間はせいぜい2泊3日。従って、1日のロケで最低5〜6カ所を回らなければいけないハードスケジュールにならざるを得ない。まぁ、それは良しとして、最大の難点は思わぬ所にある。

それは、他でもなく、「ソウルの交通事情‼︎」

皆さんも一度は経験しているかと思いますが、車がちっとも動けない凄まじい渋滞が日常茶飯事のように起こる。こちらも万全を期して事前にスケジュール組む時点で移動時間には多少とも余裕を持たせてはいるが不安は消えないものです。

なので移動時間が読めない事を踏まえても現場ではとにかく遅延する事なくサクサクと進行したい。もし一ヶ所で時間が押しちゃうとドミノのようにその後の全スケジュールが崩れて来る。何としてもそれだけは防ぎたい一念で「時間との戦い」に挑むのです。

それに日本のスタッフの立場でいうと慣れてない環境で、なおさら言葉も通じない状況。特にディレクターのアシストを含めた各種の雑役をこなすAD君のテンパり度はピークに達する。

ぺさん! ぺさん! ぺさん!
ディレクターさんが撮影用の料理はまだかと・・・
カメラマンがカメラを違った場所に置いてもいいのか店主に確認してくれと・・
タレントさんがスタバのコーヒーを飲みたがっていますが、どこに行けば・・・
あの・・・トイレはどこですか・・・

大変です!前のロケ地で忘れ物を・・・

こんな状況になりがちですが、自分までテンパっていては現場が大混乱に陥る。ここは意地を張ってでも落ち着いている振る舞いをしなければなりません。何しろAD君はテンパり度MAXの状態で韓国語が話せないし、コーディネーターの僕を頼りにするしかないからです。

どの現場でも実感する事ですが、ADという仕事もめちゃくちゃ大変なんですよ。

テレビ界のAD君達に幸せあれ‼︎

韓国は今〜MERSについて語りたい事

中東帰りの一人の男性感染者のせいで全国がパニックに陥る。彼が訪れた数カ所の病院、正確には入院室が発祥地となり、あっという間に全国へ拡散される。

各病院の応急対処システムのモロさは言うまでもないが、今回の騒ぎは韓国人の生活習慣が裏目に出た災難ではないかと思います。(注意:個人的な意見です)

実は何ヶ月か前に知人のお見舞いで市内の大型病院を訪ねた事があります。知人が入院していた病室は6人室でしたが、ぱっと数えても10人以上の人で賑わっていました。知人が言うには患者さん一人につき、家族の方に限って一人までは寝泊りが許されるそうです。

知人は自分が持って行ったジュースセットの箱を開けては部屋内の全員に配る。向かいの患者さんはそのお礼で家族が持って来たお餅を我々に手渡す。ま、自分も食べたり。結果的には入院室の中に10人以上の「共同体」が生まれる形となったのです。

病院の入院室にはそれほど縁がない自分としては少し不思議な光景でしたが、人情を大事にするこの国では珍しくもない出来事だったので何とも思わず家に帰って来ました。

しかしですね・・・もしあの部屋の中にMERS感染者がいたとしたら・・・今頃自分は空っぽの病室に隔離されて寝込んでいたに違いない。あ、ゾクッとする。怖い。怖い。

韓国を訪れた観光客の方々がよく口にする言葉は
「気さくな人が多くてみんなが親切」
「韓国人は情が深い」とかですが、
この情が溢れる国民性が物の見事に裏目に出たと考えると複雑な気持ちになりますね。

今後はせめて病院という空間だけは「無情地帯」にせねばならない‼︎
これは僕だけではなく、全国民が痛感している事でしょう。

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マッコリマン
tomodachinguのソウル本部長です。
主に企画をしたり、取材をしたり、文を書きます。
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