コーディネーターって何?最終回

コーディネーターとは何か、ざっと伝えるつもりが、思わぬところで2ヶ月も続けてしまったこの連載。今回の最終回と明日アップ予定の後書きで締め括りたいと思います。감사합니다.

もし、誰かに15年歴で最も思い出深い現場は何ですか?と聞かれたら、迷いなくこの仕事を選ぶことでしょう。

念願のドラマ現場

時代は2007年。それまでにテレビのジャンル全てと言ってもいい程、様々な仕事を経験した僕はもっと刺激のある現場はないかとウズウズしていたのだが、タイミング良く巡り合えたのがドラマ「ホテリアー」の日本版。

原作は2004年韓国で大ヒットしたヨン様主演のドラマだが、日本の某テレビ局がリメイクをするという。そして、その第1話の殆どをソウルで撮影するとの事だった。主演は上戸彩さんで、なんと特別友情出演という形でヨン様がちょっとだけ顔を出すと言われてびっくり仰天!

どのロケも仕込みが大事。特にドラマの現場になると撮り方がよりディテールになる事は見え見えなので、ロケ地選びにも力が入った。毎日ソウルの隅々へ車を走らせ、各地で撮った写真だけ何百枚に及ぶ。それと各種小道具に単役俳優さんからエキストラまでの手配などなど万全を期したつもりだったが、いざロケが始まると色んなとこで問題が起こった。

初日のドタバタ劇

最初のロケ地は金浦空港。数日前にエキストラ20人を金浦空港へ集合させてくれとの発注をデスクへ頼んでいるけど、管理部長の連絡ミスで全員が仁川空港へ行ってしまったり。会社の社長の奥様でもあった管理部長にガチで怒ってボロクソを言ったのも、おそらくあの時が最初で最後だったのではないかと思うな。(笑)

そして、お弁当問題。大量に発注していたスタッフ用のお弁当が届かない。前日に何回も電話を掛けて13:00時までには何があっても届けてくれと念を押したのに一時間も遅れて来て、その後のスケジュールが崩れ、制作Pから大クレームを受ける事に。

その日のロケ後のスタッフ打ち合わせの雰囲気は説明するまでもなく最悪だった。こちらで犯したミスなので言い訳もしようがなく、「申し訳ありません」を連発するしかない。自分が最も悔しかったのは「韓国の人は時間にルーズで手抜きがある」と言った偏見を日本のスタッフに持たせ掛けていた事。実際、次の日からマメな性格の女性スタッフから「今日のお弁当は大丈夫か」、「エキストラは時間通りに来るのか」でしつこい再々確認の駄目出しを受けていた。

初日のミスを一気に挽回

いやいや。他にもイライラしたのがこちらが手配した単役俳優の演技の下手さ。焼肉屋の店長役など簡単なセリフのシーンでもNGの連続。また、スタッフからクレームが来るんじゃないか内心ひやひやしていた僕に監督さんが近寄って来るのだった。ありゃ、これはまずい事になったな。

監督 あの、ぺさんさ。明日の大家さんの役だけど、結構、重要なシーンなんだよね。
 はい。知っています。単役さんの事、心配されてるんですか?
監督 あのさ、初日から思った事だけど、この役、ぺさんがやってくれないかな?
 な、なぬ〜!いややややや。そんな〜。だって上戸彩さん田辺誠一さんとの絡みもあって、しかも3シーンありますよ・・・
監督 ぺさん、センスあると思うんだよね。俺の目を信じてやってくれたまえ。

この人は何を言っているんだと思ったけど、初日のミスもあったし、監督がそこまでお願いしているのを蹴る面目もなかったので、いやいやOKを出してしまった。まぁ、やるからには死ぬ気で挑むしかない。これで一気に挽回してやるぞ!

#1 訳ありでソウルに来て落ちこぼれになった男性主人公(田辺誠一)。何ヶ月も家賃を払っていないこの男を追い出し、道端に放り投げる悪徳の大家さん。僕が任された役なのである。一度、NGを出したけど、2回目のテイクですんなり監督のOKが出る。

#2 又もや訳ありで、落ちこぼれの男を探しに日本からやって来た女性主人公(上戸彩)。何とか男の住所までには辿りついたが、バッタリ会った悪徳の大家さんに「そんな奴はとっくに追い出したのさ」と言われてがっくり。可愛すぎる上戸彩さんと向き合って話すシーンだったが、前回のシーンで自信をつけたのか一発でOK!

#3 アパートの部屋に引き込もっている男性主人公。ドアを壊すかのように叩きながら大声で「早く、出て行け、この野郎!」を連発する大家さん。

めっちゃ緊張はしたものの、これで自分の出番は問題なくスムーズに終わった。監督は予想してたより演技がうまいと褒めてくれては、プロデューサーの方に「ぺさんにもちゃんとギャラ払って下さいね」と一言投げてくれたのである。嘘だと思ったけど、ちゃんと貰いましたよ。30万ウォン!(笑)あと、オンエア後に日本から届いたDVDを観たら、テロップで自分の名前がしっかり表記されていて大感動!

タイトルの写真は最後のロケ地だった、漢江で撮影した記念写真です。若々しいキムサマの姿が見えると思いますよ。

あ、余談ですが、ドラマのロケ中にキムサマとホテルのツイン部屋を一緒に使ったのです。あのキムサマ、シャワーを浴びてから素っ裸で出てきて、フルチンで部屋中を歩き回る大胆な振る舞いをされていました。それにびっくりするほど、デカかったです。何がですかって?うふふ。

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マッコリマン
tomodachinguのソウル本部長です。
主に企画をしたり、取材をしたり、文を書きます。
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