「このタイミングが、オレの人生の分岐点だ」
と肩を張りつつも、内心不安と希望を行き来する、
新米店主歴3日目の夜。
“あの、ひとりですけど、いいですか?”
と、照れ笑いを浮かべて店内に入って来る男がいた。
パッと見30前後、背が高く、色白で、
常にニコニコ顔の、ハツラツとした好青年。
たぶん、
これがアイツに対する第一印象だったと憶えている。


この間の東京は、楽しかったね。

はい、おかげさまで、めっちゃ楽しかったです!
でも、思わぬアクシデントもあったりして(笑)
でも、思わぬアクシデントもあったりして(笑)

そうなんよー。オレ、
新宿のライブハウスの階段で足ひねっちゃって…
新宿のライブハウスの階段で足ひねっちゃって…

そう、そう。足首めちゃくちゃ腫れ上がって、
途中でリタイアしてましたよね(笑)
途中でリタイアしてましたよね(笑)

結局、完治まで1ヶ月も掛かっちゃってさぁ…。

それは大変でしたね…

ま、余談はここまでにしよう。
とにかく、今日はよろしく!
とにかく、今日はよろしく!

はい、よろしくお願いします!


でさ、もう5年前になるけど、
うちの店にはじめて来た日って、覚えてる?
うちの店にはじめて来た日って、覚えてる?

もちろん、覚えてますよ。 当時ね、韓国でも、
やっと一人酒の文化が流行り出した頃でしたけど、
知らない人の店に、一人で飲みに行ったのは、
あの日が、生まれてはじめてだったんですよ。
やっと一人酒の文化が流行り出した頃でしたけど、
知らない人の店に、一人で飲みに行ったのは、
あの日が、生まれてはじめてだったんですよ。

へ〜、そうなんだ。
何があったんだろうね、あの日の君に?
何があったんだろうね、あの日の君に?

それが、自分でもよく分からないんです。
いつも通っていた道のビルに、
不思議な看板が出ていて、
ん? ここ、面白いかもって(笑)
いつも通っていた道のビルに、
不思議な看板が出ていて、
ん? ここ、面白いかもって(笑)

オレだって、少し驚いたよ。
韓国にも、一人で飲みに来るヤツが、
実際に、いるんだと思ってさ。
韓国にも、一人で飲みに来るヤツが、
実際に、いるんだと思ってさ。

まぁ、そうでしょうね。
でも、わりと居心地がよくて、
ついつい何時間も長居しちゃって、
飲んで、しゃべりまくる的な(笑)
でも、わりと居心地がよくて、
ついつい何時間も長居しちゃって、
飲んで、しゃべりまくる的な(笑)

そう。日本の「ワンピース」が死ぬほど好きで、
兵役も自ら志願して海軍にしたとか言いながら、
酔っ払って「海賊王におれはなる!」って(笑)
兵役も自ら志願して海軍にしたとか言いながら、
酔っ払って「海賊王におれはなる!」って(笑)

あっはははは。懐かしいですね。

2013年のキョンス君

まぁ、今思えば、
きっと、何か縁があったんだよ。
あの後も、すっかり仲良くなって、
2〜3日に一度のペースで飲みに来たりして。
きっと、何か縁があったんだよ。
あの後も、すっかり仲良くなって、
2〜3日に一度のペースで飲みに来たりして。

そうなんですよ。
その頃って、ふところ事情もよくなかったのに。
その頃って、ふところ事情もよくなかったのに。

たしか、うちに余ってた酒は、
全部君に回したりしてたな(笑)
全部君に回したりしてたな(笑)

ほんと、感謝してますよ。
あの時があったからこそ、
今の自分がいるようなものなので。
あの時があったからこそ、
今の自分がいるようなものなので。

いやいや、そんな君が、
いまやメディアに出まくって、
スター作家さんって呼ばれるなんて、
思いもよらなかったね。
いまやメディアに出まくって、
スター作家さんって呼ばれるなんて、
思いもよらなかったね。

自分で言うのもあれですけど、
人の人生って分からないものなんです(笑)
人の人生って分からないものなんです(笑)

ほんと、そうだね(笑)
ところで、ちょっと話題を変えて、
学生の頃の話を聞かせてもらえるかな?
ところで、ちょっと話題を変えて、
学生の頃の話を聞かせてもらえるかな?

幼い頃から絵を描くのは好きでしたけど、
中学高校の時は、とにかく、
ヒップホップに夢中でした。
特に、中学の時は、ヒップホップ自体が、
そんなにメジャーなジャンルではなくて、
周りに聴いているヤツなんて、
ほとんどいなかったですけどね。
中学高校の時は、とにかく、
ヒップホップに夢中でした。
特に、中学の時は、ヒップホップ自体が、
そんなにメジャーなジャンルではなくて、
周りに聴いているヤツなんて、
ほとんどいなかったですけどね。

ヒップホップのどういうところに惹かれたわけ?

うーん、なんと言うか…。
リズムに合わせて、アドリブでラップを歌うとか、
の「即興性」ですかね。
リズムと言葉で遊ぶ感覚がたまらなかったんです。
実際、ぼくは「B-BOY」としても活動していたし、
ラップを一生懸命書いていた時期もありました。
リズムに合わせて、アドリブでラップを歌うとか、
の「即興性」ですかね。
リズムと言葉で遊ぶ感覚がたまらなかったんです。
実際、ぼくは「B-BOY」としても活動していたし、
ラップを一生懸命書いていた時期もありました。

プロになろうとは思わなかった?

そこまで才能ないって自覚しまして(笑)

まぁでも、その頃に身につけたものが、
近年の君の作品によく表れている気もするけどね。
近年の君の作品によく表れている気もするけどね。

あ、それは絶対あるでしょうね。
「言葉遊び」っていう部分では、特に。
「言葉遊び」っていう部分では、特に。


オレの中高時代は、「ロック」だったね。
皆「ロック」に熱狂しながら、
反抗期の鬱憤を晴らしていた。
皆「ロック」に熱狂しながら、
反抗期の鬱憤を晴らしていた。

なるほど。何となく分かるような気がします。

ところで、君は中高時代に反抗期はなかったの?

あぁ、反抗期ですか…
僕の場合は、それより何より、
親父に対する不満がものすごくて…
僕の場合は、それより何より、
親父に対する不満がものすごくて…

あのー、つまりそれが反抗期ってことだよね?(笑)
<つづきます>
「絵を描く時が一番幸せです!」

1984年1月26日・韓国ソウル生まれ
各種SNSで「絵画王 ・ 梁治己(ヤンチギ)」
のペンネームで、大学生、サラリーマン、
主婦など、一般人の共感を得るユニークで
多彩なイラストを制作する一方、
現代の目線で再解釈した仏教美術を
専門とする現代美術家として、
国内外で活発に展示活動を行っている。
2015 | ノルウェー「Maidans Fastival」作品展示 |
---|---|
2016~2017 | オランダ国立世界文化博物館 「THE BUDDAHA」作品展示 |
2016.05.25 | 「あ、『やりがい』とかいらないんで、とりあえず残業代ください」(日野瑛太郎作) 韓国語翻訳へのイラスト提供 |
2016.11.15 | イラスト・エッセイ集 出版『실어증입니다. 일하기 싫어증』(オウア) |
2017.04.13 | 「キム課長(KBSドラマ)職場白書」イラスト提供 |
2018.03.29 | イラスト・エッセイ集 出版「JOB多なCUT」(ウィズダムハウス) |
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