第3回 はじめて大衆を意識する

お店には、
韓国と日本の酒好きが集っていた。

韓国旅やK-POPを心から楽しむ日本人客と、
日本の文化に馴染みがある地元の若者が、
気さくに触れ合っている。

以前から
イメージしていた光景
現実として目の前に繰り広げられたのだ。

マッコリマン×ヤンキョンス
マッコリマン
うちの店に来るようになった頃って、
どんな仕事をしていたの?
ヤンチギ
えーと、当時、メインでやっていたのは、
弘大周辺のお店の店内に壁画を描くことでしたね。
マッコリマン
相変わらず、収入は不安定で?
ヤンチギ
そうですね。あ、でも、
先輩が経営していたチキン店が、
支店をどんどん増やしていた時期で、
店の壁画は全部任されたので、
固定収入は多少ありましたね。
マッコリマン
で、その金を全部うちで使っていたわけか?
ヤンチギ
あはは。
楽しい事には金を惜しまないタイプでして。
マッコリマン
店内で興に乗って踊りまくる君の姿が、
まるで、昨日のことのように目に浮かぶよ(笑)
ヤンチギ
なんかね。ぼくにとって、ぺさんの店は、
ほんとに「新世界」のような場所でしたねえ。
あれだけ日本人と韓国人が触れ合える店
他で見たことがなかったですし。
マッコリマン
そうだね。
日本人、韓国人、関係なく、
誰でも気軽に触れ合える環境には、なっていたよな。
ヤンチギ
毎日が楽しすぎて、
早く夜にならないかな〜って、
出勤する感覚で通っていましたもんね(笑)
マッコリマンとコワイヌナにて

マッコリマンとコワイヌナにて

マッコリマン
あの頃ってさ、オレも君も、
先行きについて、結構不安を抱えていた時期じゃない。
ヤンチギ
たしかに、僕は絵描きとして、
突破口を必死に探っていた時期でしたけど、
ぺさんもそうだったんですか?
マッコリマン
そうだよ。オレだって、
安定した職場を飛び出してはみたものの、
お店がうまく行くかどうか、見通しがつかなくてさ。
実は、不安だらけの毎日だったんだよね(笑)
ヤンチギ
そうなんですねー。
当時は、全く気付きませんでした(笑)
マッコリマン
だから、お互いに、
色んな意味で助け合っていたんじゃないかなって。
ヤンチギ
なるほど。それはそう言えるかもです。
マッコリマン
で、日本からのお客さんをもっと引き寄せようと、
君を使って、Youtubeの動画を制作したりね。
ヤンチギ
あ、出た〜「Nallaridols」!!
マッコリマン
今、観るとめちゃくちゃ恥ずかしいけどな(笑)
ヤンチギ
いやいや。
でも、当時の韓国では、
Youtuber(ユーチューバー)って名称も
あまり聞かない時代だったので、
かなり面白い試みだったと思いますよ。
マッコリマン
まぁね。
しかし、スタッフも出演者も、
みんな基本ノーギャラでやってくれたけど、
意外と制作費がかかっちゃってさ…
ヤンチギ
え? どういう事ですか?
マッコリマン
それがね。一本制作するのに、
メシ代だけで100万ウォンも…(笑)
ヤンチギ
あっははははは。
たしかに撮影終わったら、焼肉食べて酒飲んで。
しかも、ほとんど野郎だったしね。
マッコリマン
だから、4本まで制作したところで、
打ち切りにせざるを得なかったというわけ(笑)
ヤンチギ
いやー、でもね。僕のキャリアの中では、
あのプロジェクトは相当、モニュメンタルな作品なんですよ。
マッコリマン
えぇ〜、そこまでだったの?
ヤンチギ
ぺさんって、
結構日本にファンがいたじゃないですか。
マッコリマン
まぁ、うん。
ヤンチギ
おそらく、僕が、
はじめて大衆を意識して描いたのが
あの時のイラストなんですよ。
ナルラリドルス

Nallari Dols

マッコリマン
あぁ、あのクオリティには、マジでびっくりした!
みんなのイラストを描いてくれないかって、
何気なく頼んだら、とんでもない作品が送られてきてさ。
こいつはただ者じゃないかもって、感心しちゃったよ。
ヤンチギ
実は、あの時、学んだことがあるんですよ。
マッコリマン
学んだことって?
マッコリマン×ヤンキョンス
ヤンチギ
ま、ごく当たり前なことかもしれませんけど。
やっぱり、ウキウキ感を持って臨んだ作業は、
良い結果物として残る
んだなって、しみじみ思ったんです。
マッコリマン
おぉ〜それは、
プロデュースした立場として、とても嬉しい言葉だね。
ヤンチギ
ぺさんとの経験がその後、
僕の作品に良い影響を及ぼしたのは言うまでもないです。
マッコリマン
役に立ててよかった。本当よかった!
でも、身内どうしの褒め合いは、これで終わりにしない?(笑)
ヤンチギ
ははは。了解っす!

<つづきます>


「絵を描く時が一番幸せです!」

ヤン・キョンス

1984年1月26日・韓国ソウル生まれ

各種SNSで「絵画王 ・ 梁治己(ヤンチギ)」
のペンネームで、大学生、サラリーマン、
主婦など、一般人の共感を得るユニークで
多彩なイラストを制作する一方、
現代の目線で再解釈した仏教美術を
専門とする現代美術家として、
国内外で活発に展示活動を行っている。

2015 ノルウェー「Maidans Fastival」作品展示
2016~2017 オランダ国立世界文化博物館
「THE BUDDAHA」作品展示
2016.05.25 「あ、『やりがい』とかいらないんで、とりあえず残業代ください」(日野瑛太郎作)
韓国語翻訳へのイラスト提供
2016.11.15 イラスト・エッセイ集 出版『실어증입니다. 일하기 싫어증』(オウア)
2017.04.13 「キム課長(KBSドラマ)職場白書」イラスト提供
2018.03.29 イラスト・エッセイ集 出版「JOB多なCUT」(ウィズダムハウス)

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ABOUTこの記事をかいた人

マッコリマン
tomodachinguのソウル本部長です。
主に企画をしたり、取材をしたり、文を書きます。
「韓国のこんなことが知りたい」という方はメール下さい。