80年代の韓国。超高度経済成長期というので国中にお金が溢れ出していたのが政治界の裏側では汚いワイロが乱舞し、社会の隅々に不正腐敗が蔓延していたと言われる。そして、それは教育界も例外ではなかったというのだが…。
中2の頃。父は某プロ野球チームのヘッドコーチに就任し、野球人生の中で最も重要な役割を任されるようになる。一方母は日本で学んできた『デコパージュ』という室内装飾美術の専門家として教育テレビに出演するなど多忙な日々を送っていた。
まぁ後に我が家族は海外へ移民し家が潰れるのを経験するので、経済面で言わば『うちの黄金期』は僕が中学を卒業する時期までだったと言えよう。
ヤラシイ鬼
前回の連載に登場した『鬼』と呼ばれる女教師。新学期が始まって3日目の放課後に僕を呼び出して「あのさー。君のお母さんって◯◯さん? 私もテレビで見たわよ。それにお父さんはあのチームのコーチだって?」と興味津々な表情を浮かべながら言った。
ぺ 「そうですけど、何か?」
鬼 「あのねー。今日家に帰ったらお母さんに今週以内にぜひともお会いしたいと伝えといてね」
ぺ 「は? 何でですか? 僕、何も悪いことしてないですけど」
鬼 「(イラついて)そうじゃなくって。ただお母さんにそう伝えれば分かるのさ(舌打ち)」
そしてその日、夜遅く家に帰ってきた母にそれを伝えると。
「あらあらあら、ヤラシイ先生なのねー。そんな露骨に言わなくたって…今は平日に時間が取れなくて夏場前に行こうと思ったけど…(舌打ち連発)」と軽くスルーしたのだった。
僕は先生の何がヤラシイのか少し気になったけど、当時夢中になっていた任天堂のゲームにすぐさま目を向けた。
当時、あの鬼がオンマに会いたいと言い出したのは深い意味のこもった『合図』であったのを僕は大人になってから気づいたのである。
奇行連発の鬼教師
韓国は5月15日が『先生の日』で、毎年その日を迎えると小中高かまわず、生徒たちが担任先生にカーネーションをつけてあげるのが定番である。
だが、1984年5月15日の我がクラスはというと。みんなが約束でもしたかのように誰一人カーネーションを用意していない。まぁあの教師の人柄じゃ無理もないことだが、放課後に教室へ入ってきた鬼は↓
「あのねー。お前たちには失望のあまりに言葉すら出ないの。隣のクラスの先生は花束貰ってるし、◯◯先生はケーキまで貰ってるのよ。私、教務室で立場がなくって…もうあり得ない。みんな、教室に残って2時間自習することを命じる!」と言い残し、さっさと教室を後にしたのである。
「なんだよ〜この欲張り女」 「毎日毎日ヒステリーぶってさ」 「絶対旦那と仲悪いんだろう」 「あんたにカーネーションなんかやるもんか」と数々の苦情が教室内に飛び交われる中、事態の深刻さにやっと気づいたのんきな級長は慌てて校内の売店へ駆けつけカーネーションを一本買ってきた。
そして2時間後に再び教室へ現れた鬼にそっとカーネーションを差し出したのだが、あの女鬼は「何よー今さら!」とガンガン怒りまくって、級長の『敬愛心』がこもったカーネーションをあの『너구리ピッチャー』の強速球のように投げつける信じられない大胆さを見せたのである。
「あ…早く3年生になれる方法はないのかなぁ…」と思ったのは僕だけじゃないかもしれない。
手鏡よ…あ…手鏡よ…
でも、学校内には野郎どもの間で絶対的な人気を誇る女教師もいた。25歳の数学先生。ショートカットで美人顔。いつも膝が見えるスカートを履いていたナイスボディーの持ち主。女鬼とは打って変わって、口数が少なく微妙にエロい雰囲気を漂わせる女神的な存在感。
「あ…数学先生のような女と付き合いて〜よ」と誰もが口を揃えていた。はてには「しかしあの先生はどんなパンツ履いてるのかな?」と下心丸見えのセリフを言う奴もいたのだが、「変な想像してんじゃねーよ! うーむ。でも、網パンツだったりしてな…」と言い返す僕であった。
そんなある日。1限目の美術の授業の内容が「手鏡に映る自分の顔を見て自画像を描く」というので、みんなが片手に手鏡を持って登校したのだが、すべての事件の発端はこの手鏡から始まる。
それにクラス内のあらゆるイタズラや悪さの中心には僕がいたのだ。
さて、どんな事が起きるのだろうか。
もうすでにお気付きの方がいらっしゃると思うのだが…