第2回 88万ウォン世代

2007年、
とある経済学者が書いた著書を通して、
はじめて世に紹介された言葉「88万ウォン世代

要するに、

“当時の20代の95%が非正規職として雇用されており、
彼らの月平均給与が88万ウォンに過ぎない”

というようなことを強調するために使われたフレーズ。

以降そのフレーズは、
メディア各社によって取り上げられ、
韓国の20代を象徴する流行語となったのだ。

マッコリマン×ヤンキョンス
マッコリマン
君の親父さんといえば、
仏教美術界で、かなり有名な方だよね?
ヤンチギ
一応、まぁ、はい。
マッコリマン
親父さんとは、どんなトラブルがあったの?
ヤンチギ
父は、古い考え方をものすごく押し付ける人で、
自分が職人としてやってきたことを、
無理やり僕に継がせようとしたので、
年がら年中ぶつかり合っていました。
マッコリマン
なるほど…
「自分にもちゃんと未来の計画があるのに」的な?
ヤンチギ
その通りです。
僕に芸術性があるとしたら、その原点は仏教美術で、
間違いなく、父親からの影響も大きかったとは思います。
でも、昔からのやり方を、
そのまま踏襲するような形ではなく、
自分なりにしっかり解釈をした上で、
現代風なアレンジを加える作業を僕はやりたかったんです。
2014年作「THE TEN」(十大弟子)

2014年作「THE TEN」(十大弟子)

マッコリマン
うんうん。ちょうど、
アーティストとしての世界観が、
芽生えはじめた時期だったんだろうね。
ヤンチギ
はい。
それで、美大に進学した時も、
敢えて西洋画を専攻にしました(笑)
マッコリマン
なかなか根性のあるヤツだったね。
その時の親父さんの反応は?
ヤンチギ
反応も何も、結局、家を出てきちゃったので…
マッコリマン
なんか、成功物語のテッパンになってきたような(笑)
ヤンチギ
そうですかね(笑)
マッコリマン
それで、一人暮らしでも始めたの?
ヤンチギ
いえ、とりあえず、弘大の近くに部屋を借りて、
親しい仲間3人と共同生活を始めました。
大学を卒業するまでは、
路上のアクセサリー屋をはじめ、クラブのスタッフやら何やら、
ありとあらゆる職を転々としながら、
なんとか食っていけた感じです。
ヤン・キョンス
マッコリマン
ところで、就職活動ってしたことはある?
ヤンチギ
それが、全くないんですよね。
マッコリマン
へぇ、それはなぜ?
ヤンチギ
うーん…なんか、
特に入りたい企業もなかったですし。
大学卒業後にフリーランサーとして、
安定した仕事を見つけたこともありますね。
マッコリマン
おぉ、それは、どんな仕事かな?
ヤンチギ
あの、東大門に行くと、
ファッションビルってあるじゃないですか?
マッコリマン
「DOOTA」みたいな?
ヤンチギ
はい、はい、そうです。
たぶん、行ったことあると思いますけど、
中は似たような売り場が延々と並んでますよね。
マッコリマン
うん、うん、あるある。
ヤンチギ
そういう売り場の
インテリアデザインをやっていたんです。
業者からは「ショップ何軒」単位で、
発注が来るので、工事が終わると、
結構まとまった収入が入りました。
マッコリマン
ほぉ〜それで少しはリッチになったの?
マッコリマン
ヤンチギ
それが…
何年か続いたんですけど、
半年分のギャラを持って逃げた業者がいて…
マッコリマン
あらら、詐欺にあったのか。いくらぐらい?
ヤンチギ
約3000万ウォン…
マッコリマン
痛タタタタ。それは、つらいな…
ヤンチギ
もう二度とそんな仕事はするものかって、
だいぶ落ち込んじゃって…
マッコリマン
そりゃ、落ち込むよなあ。
ヤンチギ
マジで、つらかったです。
マッコリマン
なるほど、それで、
88万ウォン世代」に逆戻りしたわけか(笑)
ヤンチギ
88万ウォンところか、
10万ウォンも稼げない月が当分続きました(笑)
マッコリマン
でもさ、よく考えたら、そういった苦い経験が、
後々の名作の題材として蘇るわけじゃない。
ヤンチギ
たしかに。あの事件がきっかけで、
「これからはお描き一筋で勝負するぞ!」
って、開き直ったわけですしね。

<つづきます>

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「絵を描く時が一番幸せです!」

ヤン・キョンス

1984年1月26日・韓国ソウル生まれ

各種SNSで「絵画王 ・ 梁治己(ヤンチギ)」
のペンネームで、大学生、サラリーマン、
主婦など、一般人の共感を得るユニークで
多彩なイラストを制作する一方、
現代の目線で再解釈した仏教美術を
専門とする現代美術家として、
国内外で活発に展示活動を行っている。

2015 ノルウェー「Maidans Fastival」作品展示
2016~2017 オランダ国立世界文化博物館
「THE BUDDAHA」作品展示
2016.05.25 「あ、『やりがい』とかいらないんで、とりあえず残業代ください」(日野瑛太郎作)
韓国語翻訳へのイラスト提供
2016.11.15 イラスト・エッセイ集 出版『실어증입니다. 일하기 싫어증』(オウア)
2017.04.13 「キム課長(KBSドラマ)職場白書」イラスト提供
2018.03.29 イラスト・エッセイ集 出版「JOB多なCUT」(ウィズダムハウス)

ABOUTこの記事をかいた人

makgeolliman

マッコリマン
tomodachinguのソウル本部長です。
主に企画をしたり、取材をしたり、文を書きます。
「韓国のこんなことが知りたい」という方はメール下さい。